007は二度死ぬ。
野球も、人生も、同じだ。
失敗しても、やり直せばいい。

【転がり落ちるどすこい】
その男は、プロ野球選手としてマウンドに立っていた。
2017年。
破格の年俸で巨人にFA入団した山口俊投手は、逆風にさらされてきた。
元力士・谷嵐の息子、ということでつけられたあだ名は「どすこい」。
移籍後、防御率6点台と精彩を欠いているうちに、彼はとんでもない事件を引き起こす。
自らの誕生日パーティーで泥酔し…


©横山光輝 / 三国志 / 潮漫画文庫
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ドドスココ!ドドスココスコスコ!
バコ!
ボコボコココン!
バリィン!!
病院の扉を壊し、警備員に暴行を加えた…という疑いがもたれたのだ。
(事件の真意は別として、このようなニュースが上がってしまうこと自体が問題だ)
度重なる不祥事に慣れつつあったファンや球団も震撼する暴挙。
G党は口を揃えた。
「どすこい、マジかよ…」
処分は非常に重いものだった。
2017年シーズン終了まで3カ月以上の出場停止に加え、罰金、減俸合わせて1億円ともいわれる金銭面での代償も背負った。
どすこい自らが招いた事件。
なちゅらるに、自業自得。

しかし、私はどすこいの気持ちがわからなくもない。
きっと彼は、FAで移籍したにも関わらず芳しくない成績であることを周囲から笑われたのだろう。
人はうまくいかないときほど、頭に血が上ってしまう。
どすこいも、きっとそうなのだ。
しかし、暴力はいけない。彼は社会的に大きな注目を浴びるプロ野球選手なのだから。
2017年シーズン後半、誰もがどすこいの存在を忘れていただろう。
崖っぷち状態に陥ったどすこいは、この時…
その右腕で、復活の呪文を唱えた。
*地獄に落ちたカンダタという名の泥棒の男が、蜘蛛を助けたことがあったことから、釈迦がこの男に手を差し伸べるも…という物語は、「蜘蛛の糸」(芥川龍之介)
*三国志・張飛は禁酒の指示を破り、城を奪われるなど何度も大失態を犯している。(©三国志・横山光輝先生)

【サイレントローテ】
謹慎明けの2018年。
どすこいは人知れず、開幕ローテーションに入っていた。
かのヒット曲「サイレントマジョリティ」(欅坂46)を彷彿とさせる、

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「サイレントローテ」
どすこいはシーズン終盤までローテを守り、自身初の規定投球回を投げ切る働きを見せた。
7月にはノーヒットノーランを達成。
ブルペンが壊滅状態に陥ったシーズン終盤には抑えも務めるなど、まさに大車輪の活躍を見せた。
勝てば官軍。
プロ野球ファンというのは現金なものである。
贔屓チームを勝利に導くなら、過去のトラブルには目をつぶる。
彼の活躍を見たG党は思った。
「どすこい、罪滅ぼしモードに入る」

(黄巾族の乱の討伐戦で熱い思いを叫ぶ張飛。背後で彼を止めるのは関羽)
【どすこいモデルチェンジ】
私が最も好きなウルトラマンは、V6の長野君が演じていたティガだ。ウルトラマンティガは、戦闘の場面に応じて、マルチ・スカイ・パワーの3つの形態をとることができる。

©ウルトラマンティガ / 円谷プロ
顔は全て同じだが、体の色が違う。きっとペンキで塗っている。
『ダイナ』や『オーブ』、『ジード』でも継承されたこの形態チェンジ。
実は、どすこいも、ウルトラマンティガと同じだった。
今までのどすこいは、明らかにパワータイプだった。
オーバースロー投げおろす150キロを超える豪速球とスライダー、フォーク、真っ向勝負型の投手。
しかし、2018-2019年のピッチングは、その頃とはちがう。
近いスリークォーターから、ほどよく力を抜いたフォームでボールを投げ込んでいく。
そう、テクニック重視の、スカイタイプだ。
だが、どすこいは、速球派がベテランになって技巧派になったわけではない。
相変わらず平均球速は高いのだ。
つまり、 ♪馬力を最大限にKEEP♪ したまま引き出しが増えたのだ。
ハイブリッドな投手、どすこいの誕生だ。
ハイブリッドつながりで、ハイブリッド車に乗せてみた。

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2019年シーズン、
どすこいは、15勝4負という素晴らしい成績で、チームを5年ぶりのリーグ優勝に導いた。
【どすこいの 覚醒】
父は元幕内谷嵐というDNAが関連しているのか、どすこいは太りやすい体質だ。
オフシーズンには「角界進出か?」という体型で公の場に出てくることもあった。
その体型どおり、マウンドでもメンタルが強い。
というタイプではない。
どすこいはどちらかといえば小心者かもしれない。
精神的ストレスによる円形脱毛症を告白したり、ピンチになると唇が紫色になることを村田選手にいじられたりしていた。
酒量がチームトップクラスであったのも、酒におぼれて暴力事件を起こしてしまったのも、
少し、精神面がもろかったからかもしれない。
巨体に似合わず脆く、酒に弱い。
この記事で再三登場している三国志の張飛に似ているのだ。

ヒウィゴー
そんな少しメンタルの弱いどすこいが30歳を過ぎてから急成長を果たした。
2019年シーズンは、絶対エースの菅野がピリッとしない中、巨人のリーグ優勝の立役者だ。10月9日のクライマックスシリーズの初戦でもマウンドに立ち、日本代表にも選出されている。
彼の覚醒の理由は、なんだったのだろうか。
その答えはたぶん、暴力事件後の謹慎期間だ。
どすこい自身がこう述べている。
「謹慎中はプロ野球生活の12年間の行動を考え直す時間だった」
彼はきっと、この期間に自暴自棄にならなかったのだろう。
自らの行いを見つめ直し、今から何をすべきかと向き合った。
その結果が、謹慎後に活躍し始めたころのどすこいの言葉に表れているので、それを引用する。
*
僕の原点はFAでチームに来た1年目です。
最初は(巨人という名門球団の)重圧やケガもあって活躍できず、私生活のトラブルでは球団にマイナスのイメージを付けてしまいました。
それでも野球をできる環境をいただけたました。
(クビになってもおかしくはなかったが謹慎後にチャンスが与えられる)
僕は自分のことを一度死んだ人間だと思っています。
消える過去ではないけど、もう一度はい上がる。
あれで「終わったな」と言われたくなかった。
周りが認めてくれるか分からないけど、まず野球人として野球の成績で見返す。
迷惑をかけた分、ジャイアンツのために頑張る気持ちでやってきました。
最後になりますが、僕には4歳と3歳の子供がいます。
毎日の「お仕事頑張ってねー」という言葉がすごく励みです。
子供に物心が付く小学校、中学年ぐらいまでは第一線で野球をやりたい。
【地方男どすこい 】
どすこいには、もう一つ、有名なエピソードがある。
それは、地方球場を小ばかにする、ということだ。
*プロ野球は年間で何試合か、地方球場で試合をすることがある(通称どさまわり)
そのときの、どすこいは、驚異的な力を発揮し、大活躍する。
そのときのヒーローインタビューでのどすこいの言葉を引用する。
インタビュアー:「宇都宮のファンの皆さんから拍手が起こってます。山口さんは地方に強いですね?」
どすこい「まぁ結果として抑えてるので…ちゃんとした球場でも…」

インタビュアー:(真顔)
どすこい「あ、ちゃんとした球場じゃないや!すみません」
インタビュアー:(苦笑い)
どすこい「ホ、ホームゲームでも・・・あの、はい、しっかり頑張ります」
発言だけをとれば地方球場をバカにした問題発言だ。
しかし、どすこいの雰囲気とあいまって、ネットでスレが立つほど人気がでた。
これがどすこいの魅力だ。
【私はどすこいが好きだ。】
彼はやっぱり剛腕だ。
1億円の罰金も、警察沙汰も、力づくで過去の出来事にしつつある。
地方球場を小ばかにしても、笑い話に変えてしまう。
「泣かないよ~」なんてボケもかましてしまう。
そんなどすこいが、私は好きだ。
どすこい山口俊の復活は、人間、どんなどん底からもはい上がれる、人生いつからでも逆転できる、ということを教えてくれているのかもしれない。
【最後に】
野球をあまり知らない方も、
どすこいをあまり好きでない方も、
誰よりも人間味にあふれた不死鳥がいるということを、心の片隅に留めていただければ幸いです。
完璧な鉄仮面よりも、ついつい本音を言ってしまったりやらかしてしまう人を応援してしまいたくなるのが私の特徴です(笑)
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