4話 36kgに肩パン、そして立候補 / 【短編集】当たって砕けろ受付嬢

3話 白魔導師と盗賊があらわれた / 【短編集】当たって砕けろ受付嬢

↑3話はこちらです!

ドッドッドッ

お姉さんは、質問という名の連続パンチを的確に放ってきました。

年齢の話を避けたいがために、ぼくに答えさせるように仕向けてくるのです。

その中でも、ぼくの鳩尾にクリーンヒットしたのが、この質問です。

「鳥取県に住んでいるのに、関西に帰省しすぎじゃないですか?」

たしかにぼくの帰省回数は異常でした。
鳥取県と神戸市が近いとはいえ、月に2回も帰省しているのです。

しかし、「帰りたいから帰る」という抽象的な答えしかありませんでした。

そこに山があるから山に登るように、神戸に実家があるから実家に帰るのです。

それと、「関西に帰らないと、こうやってお姉さんに会えないじゃないですか」と、さりげなく好意を伝えます。

お姉さんは、「また、うまいこと言って~」と言っていましたが、そのときの表情は確認できませんでした。

お姉さんはラインでの塩対応とはうって変わって、饒舌に話してくれました。

ラインでは、「はい」「いいえ」「わかりました」など、
感情のない初期ロボットのような反応しか返ってきませんでしたが、今は、若手芸人ですか?と聞きたくなるくらいには饒舌です。

これは、ぼくに少しずつ心を開いてくれているからかもしれません。

いや、たぶん違います。

彼女はジキルとハイドのような二重人格なのです。

山が好きすぎて、山を走っているときのみ社交的になる系の白魔導士なのでしょう。

また、行動を共にする中で、お姉さんが天然であることにも気づいてきました。

そのことをぼくが指摘するとお姉さんは、
「友達から天然やと言われるんですけど、私自身はしっかりしてるって思っているんですよ」

そこで、しっかりしていることがわかるエピソードを彼女に尋ねてみました。

彼女は、ほっぺをふっくら膨らませてからこう答えます。

「一人暮らししていることですね!」

失礼ながら、もし容姿が優れていなかったり、年下であった場合、ぼくは彼女にこの技をかましていたでしょう。

渾身のデコピンを。

しかし、顔の可愛さというのは、多少の天然発言を全て飲み込んでしまう破壊力があるのです。

ぼくは、オブラートに包んでつっこみを入れます。

「え?それだけですか?
31歳で一人暮らし経験がないとなるとそれは怖いですよ」

「そう言われるとそうですね。
けど、ほかにはしっかりしているところと言えば…

あ!全体をみてください。全体的にはしっかりしているんで!」

全体って、どこやねん!?

頬を赤らめてそう主張するお姉さんを、ぼくはギュッと抱きしめました。

これか、この体全体のことか。

暖かい肌感、シャンプーのにおい、これが年上の魔力です。

すみません、嘘です。
抱き締めるどころか、触れることさえできません。

抱きしめる妄想だけはしましたが。

正直、しっかりしてようが、してよまいが、どっちでもよかったのです。

ただただ、目の前のお姉さんが可愛かったのです。

―――――――――――――――――――

登りが終わって、頂上にたどり着いたとき、お姉さんは、休憩しましょう!と言いました。

そして二人で、木に腰掛けます。

「サンドイッチ食べますね」と言って、満足そうにサンドイッチをほうばるお姉さん。

その横で、口を尖がらせ、ウイダーインゼリーをちゅぱちゅぱ吸うカブトムシに限りなく近いぼくがいました。

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ぼくは、恥ずかしさのあまり、なるべくちゅぱちゅぱしないように、ちゅ~、とゆっくりと吸いました。

なぜ、この食事をチョイスしてしまったのか。

ゼリー飲料を飲むカブトムシにならざるを得なかった買い物ミスを呪います。

山を下山して、辿りついたのは、見覚えのある景色、そう、阪急の嵐山駅です。

お姉さんは駅前の出店をみてこう言いました。
「あ、からあげ美味しそう!
けど、まだそんなに走ってないのに食べたら太っちゃうからやめとこ」

わずか3秒の自己解決です。

彼女はどうやら、ダイエットに苦悩する乙女なのです。

こういうとき、男はなんといえば良いのでしょうか?

やはり、太くない、というべきなのでしょうか。

ぼくはここで、お姉さんがそんなに太くないことを伝えます。

「安心してください。お姉さん、かなり細いですよ」

「ほんとですか?けど、もっと痩せたくて」

「しおりさん。これ以上痩せるのは危険ですよ」

「え?危険??」

「女優の桐谷美鈴さんを知ってますか?」

「知ってますよ。彼女、とても細いですよね」

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「いや、細すぎると思ったんですよね。
実際、ググってみたら、36kgしかないんですよ。

36kgなんて、肩パンしたら骨折れますよ!?」

「肩パンしないですよ~」

「いや、三浦君が、ちょっと肩パン…」

「しないです!」

「ある日ぼくは、桐谷美鈴の痩せすぎた体型が心配すぎて、夜も10時間しか眠れなくなりましてね。
次の日、所属事務所に、電話して、彼女にもう少し体重を増やした方が良いって伝えてもらったんですけどねえ」

「ほんとですか??」

「想像にお任せします」

「うふふふ」

「まあ、程よい体型が一番じゃないですかね?
痩せすぎず、太りすぎずが一番です」

「そうですよね。
じゃあ、今日走り終わったら甘いもの食べますね!」

ぼくのくだらない話が、彼女のダイエット魂を揺るがせたのです。

―――――――――――――――――――

「oh… where …」

外国人観光客が、ぼくらに英語で何かを尋ねてきました。

「オー??ザッツザッツ!」

お姉さんは、出川イングリッシュで適当な対応をするぼくを制して、持ち前の接客術と英語力を生かし、スマートに返答していたのです。

ちょっぴり抜けてるアラサ―乙女の有能な一面に、ぼくはさらにハートを射抜かれました。

これこそ、白魔術とやらなのかもしれません。

バックナンバーさんは黒魔術を歌詞に引用しましたが、お姉さんはきっと白魔術の使い手です。

―――――――――――――――――――

ランニングを続けている途中、お姉さんは、あまり周囲の景色は見ていないようでした。
嵐山の寺院に目もくれず、とにかく走ります。

もちろん彼女はコースを間違えているわけではなく、京都トレイルランコースと書いている標識に沿って走っています。

さらにスポーツウェアで観光地を走ることに、恥じらいはないようです。

彼女の辞書に恥じらいはないのでしょう。

しかしお姉さん。
ここが観光地であるということは理解しているようで、観光客が多いところでは、邪魔にならないように、しっかりと歩きます。

しかし、歩く姿がなにやらそわそわしているのです。

「お姉さん、走りたくてそわそわしてますね。平日やのに観光客が多くて走りづらいですよね」と、ぼくが伝えると、お姉さんは堰を切ったように叫びました。

「そうなんです!早く走りたいのに人が多くて!!」

どうやら彼女は、走りたい気持ちを必死に抑えているようなのです。

少し歩いた後、観光客が減ってきました。
そこで、お姉さんは、「行きましょう!」と陽気に叫んで駆け出したのです。

これはまさに、ぼくの高校時代と同じでした。
体育祭の最中に、運動場の中央がガラ空きな時に、運動場の真ん中にダッシュしてハンドスプリングをする。
そして失敗して全校生徒から笑われる。あの感覚です。

どうやらお姉さんは、ぼくと似たような部分を持っているようなのです。

ほどなく、お姉さんはこう言いました。
「一人で走りに行ったら友達から気持ち悪いって言われるんです。
私もできれば誰かと走りたいんですけど、ランナー友達と日にちが合わないときは、一人で走るしかしかたないんです。」

「気持ち悪くなんかないですよ。お姉さんが走りたいならいいじゃないですか。
その気持ちわかりますよ。
ぼくも城が好きですけど、だれも行く人がいないので、一人で行って気持ち悪がられます」

「私、この前伏見桃山城行きましたよ。
伏見のトレランのコースに、城ありました!」

どうやらお姉さんは、関西一円を走り回っているようでした。

日本全国が彼女の庭なのかもしれません。

相変わらず観光地には目もくれず、走っていくお姉さんですが、突然、「あ!紅葉!綺麗!!」と、叫ぶこともありました。

全く景色を見ていないわけではないようです。

ぼくはお姉さんが紅葉を褒めた様子がおかしくて、少し笑ってしまいます。

さきほど、血液型はO型と聞いていたので、その通りだと感心している意味もありました。

すると、お姉さんはしかめっ面になり、

「今天然やな、っと思ったでしょう?」

「ええ。けど、可愛いからいっかって思ってますよ」

「また、うまいこと言って~。そうやって、みんなを褒めまくってるんでしょ?」

「そんなことないですよ!たまには、です」

―――――――――――――――――――

ぼくはこのあたりから、10褒めていた媚びの比率を変化させていきました。

褒めまくって媚びるのではなく、8褒めて、2いじるようにしたのです。

「さっきはガッキーに似てるっていったんですけど、撤回していいですか」

「え?撤回ですか」

「はい。ガッキーじゃなくて、小林麻耶に似てますね。ぶりっ子がすごい似てる」

「え~。それ褒めてますか?」

「褒めてますよ!半分だけ」

「なんか複雑~」

「可愛いけど、天然なので、なんか愛くるしいんですよね」

「あ~。バカにしてる!
もう私、怒りました」

お姉さんはそう言って拗ねるのです。
そして、「もういいです。一人で走ります~」と言って、ペースを上げます。

たったったと駆けていく白魔導士。

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©スクエアエニックス

 

ただ、彼女の歩幅は小さいので、盗賊のぼくが本気を出せばすぐに追いつくのです。

後ろから追いついて、「お姉さん怒らないでくださいよ!」とフォローをいれると、彼女はおどけた顔を見せました。

そのおどけた顔に、ぼくはゆっくりと唇を、

重ねませんでした。

へらへらして笑うしかできません。

「お姉さん、小悪魔ですね。魔性の魅力がありますわ」

「それ、昨日の飲み会で上司にも言われました~。
けど、そんなことないんですよ~。」

「え?ほんとですか??」

「そうですよー。あなたこそ、いろんな女の子と遊んでそうです」

「そんなことはないですよ」と断りを入れつつ、ここから恋愛の話を展開します。

「お姉さん、今年、花火大会は行きましたか」

「いえ、ここ何年か行ってないです。仕事で…」

「一番新しい彼氏は?」

「ここ最近は…全然いないです。
って、なんでそんなことばっかり聞くんですかあ?」

「いや、お姉さん美人やのに、なんで彼氏いないのかなって」

「う~ん。出会いがなくて」

「合コンも街婚もないんですか?」

「ないですねえ。あなたはなんで彼女いないんですか?」

ぼくはここで一言、「うぐぐ」と返し、その後、過去の恋愛の話をしました。

お姉さんも恋話が好きなようで、彼女も自分の恋愛観をにこにこと話してくれました。

「30歳を越えたら、駆け引きはもうしんどい。私を見てくれて、褒めてくれる人がいい」という、お姉さんの恋愛観のリサーチも進みます。

この状況はなんというのでしょうか。
とにかく楽しかったのです。

純恋歌の一説を借りるなら、

嬉しくて嬉しくて柄にもなくスキップして!好きって言いてえ!!

しかし、好きとは言えませんでした。

ただ、それに限りなく近く、さらに気持ち悪さを帯びたアピールの言葉を吐き出してしまったのです。

「え、ええと。
お、お姉さんの彼氏に、立候補します」

お姉さんの目は、選挙ダルマのようになっていました。

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次回はこちら…

最終回 黒か白か。彼女の盗んだものは? / 【短編集】当たって砕けろ受付嬢

 

【受付嬢の美人お姉さんに声をかけるのもオッケーですが、確実な出会いを求めるならば街コンと気づきました(笑)】

 

貴重な時間を使って読んでいただき、誠にありがとうございました!

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小説執筆、楽曲制作、コミュニティ運営(道楽舎)、投資、あらゆる分野に手を出す好奇心の塊。こち亀の両津勘吉が大好き。座右の銘は「人生は喜劇!喜怒哀楽全てエンタメに昇華!」突出した能力はないが知識の分野は広い。アイデアの錬金が得意。「中途半端王に、俺はなる!!」